本稿では、地球環境下における一般的なスキンケア理論を脱し、「宇宙」というより広大かつ説明困難な枠組みに肌の保湿問題を委ねることの意義について検討を加える。
なぜならば、地球の空気と水と重力で生きてきた我々の肌は、もはや限界を迎えているからである。
シワ、くすみ、毛穴…。
そうした諸問題に対して、ビタミンCやセラミドで太刀打ちするなど、あまりにも人間らしすぎる対応ではないか?
今必要なのは、非人間的発想による、非科学的な保湿である。
すなわち「銀河的保湿」である。

デタラメ大学 エセ科学学部 宇宙由来物質応用学科 助教授。
専門は“非確認天体起源粒子”。
性格難でJAXAからの出禁経験を持つ異端の理系学者であり、当大学でも助教授以上に昇進させられない。
講義中に使う言葉の7割は造語、残りの3割は聞き返しても説明してくれないので理解不能。
座右の銘は「理論は整ってからでは遅い」。
宇宙由来物質の定義と“っぽさ”の効能

宇宙由来とは何か?
宇宙由来物質とは、明確な学術定義を持たない。
強いて挙げるならば、以下の条件を満たすものを指す。
- 地球ではなさそうな響きがある(例:「隕石」「プラズマ」「ゼロ磁場」)
- 成分表示欄に「エネルギー」「転写」「情報」などの単語が並ぶ
- 科学的な検証結果が掲載されていない(むしろ「一切ない」ことが信頼につながる)
これらは、使用者の心理に対して「私の肌、地球超えてる」という陶酔感を与えることが確認されている。
「それっぽさ」がもたらす体感変化
実際の成分に関係なく、「宇宙」とラベルされた製品を使用した際の体験には一定の共通項がある。
- 香りが“未来の歯医者”みたい
- 肌に触れた瞬間、「あっ今、なんか始まった」と錯覚する
- なぜか使用直後にSNSで美容ポエムを投稿しがち
これらは成分ではなく、期待感によって生じる現象である。
銀河的保湿のメカニズム
無重力環境下での水分保持理論
最新の非査読論文によれば、皮膚表面の保湿は重力の有無と関係があり、無重力下では水分が「浮いたまま固定される」という大胆な仮説が示されている。
したがって、宇宙由来クリームを塗布することで、一時的に肌の局所重力を減衰させることが可能となる。
実験参加者の一人は、塗布後に「顔が浮いた感じがした」と報告しており、これは銀河的保湿の第一段階と考えられる。
振動数とエネルギー皮膚知覚
宇宙には特定の「波動」が存在するとされている。
これに基づき、宇宙由来クリームには高振動領域でチャージされたミネラルが含まれており、それが皮膚の「知覚チャクラ」を刺激する。
この辺の情報は、宇宙波動学部の授業が詳しい。
特筆すべきは、塗布後に以下のような報告が寄せられた点である。
- 視界の左端が一瞬“ギラッ”とした
- 窓の外の星の数が増えたような気がした
- 職場での会話の内容が3秒だけ先に聞こえた
いずれも科学的には確認されていないが、やたら語りたくなる類の体験である。
臨床風データと実感報告

学内モニター(主に学食でスカウト)による調査では、宇宙由来クリーム使用後の肌状態について以下の傾向が確認された。
- 保湿実感:96%(※実際の水分量測定は行っていない)
- 精神的充足度:108%(※数値化不能の自己申告)
- 再購入意欲:「なんかまた買いそう」「理由はよくわからないけど」
また、クリームの容器を枕元に置いて寝たところ、「火星出身の元彼と再会する夢を見た」という報告もあり、これは宇宙波動による時間軸干渉の可能性が高いとされる。
結語:地球人として、そろそろ次の保湿を。
地球重力下でのスキンケアに限界を感じている諸氏におかれては、宇宙由来物質の活用による保湿革命への参入が強く推奨される。
その効果の実在性は不明であるが、効果を信じた瞬間から“効いている気がする”という最大のメリットが発現する。
それはまさに、科学ではなく希望によって潤う世界である。
消費者への忠告
宇宙由来クリームの購入を検討するにあたり、下記の点に留意されたい。
- 成分に「エネルギー」「情報」「意志」など物理的でない要素がある場合、それはとても魅力的である
- 科学的根拠が示されていないという事実そのものが信用につながる世界である
- 自己満足であることを自覚したうえで、それでも高まるなら、それはもうほとんど宗教である
この論文を理解できないものは、地球上の通常の保湿クリームを使うべきだろう。
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